前のエピクテートスに続き、今度はデカルト『書簡集』のことを書こう。これも感心した記憶がある。
彼は繊細さのために自分を苦しめ気鬱になった王女に次のように言う。
それはすなわち、あらゆる種類の悲しい思いから、精神を完全に解き放たなければならないということであり、さらにまたそれを、学問上のあらゆる種類の真摯な思索からさえも絶縁させ、ただ緑の森、色づいた花、飛ぶ小鳥、その他このような、注意力をまったく要しないものを眺めては、自分を思索とは無縁の衆生と考えている人たちの、真似をすることにのみ心をもちいなければならないということでございます。
(『書簡集』竹田篤司訳 白水社)
これは本当のことだと感じる。とにかく何でもよいから、自分の気分を明るくするものを見て、心を喜びの方へ向けよ、と言っているのだ。そして、こんな打ち明け話もする。
それどころかまた私は、喜びを内に秘めた心には、運命の女神がわが身のためいっそうの好意を示してくれるようになる、なにか秘密の力があるとさえ、あえて信じる者なのでございます。
喜びのある心は運命さえ好転させると言うのだ。「ただ運命の女神の出方次第にかかっている賭け事遊び」でも、喜びを抱いているときの方が憂鬱なときより運が良かった、としている。
つまり、心の持ち運び方が大切だ、と言っているのだ。これはいつの時代でも真実だろう。
2008年3月15日土曜日
自由ヶ丘「スイーツフォレスト」
エピクテートス『人生談義』
趣味の一つに新聞、雑誌のスクラップがある。気に入った記事をクリアファイルに保存しているのだが、今日それを読み返していて、10年前の日経新聞の記事でエピクテートスの『人生談義』についてのものがあった。秋山駿氏のエッセイで人生論についてだ。当時感心したもので、以下少し長いがエピクテートスの言葉を引用してみよう。
人生は軍務のようなものであるのを諸君は知らないか。或る者は歩哨をやらなければならないし、また或る者は戦うために出て行かなければならない。皆が同一の処にいることもできもしなければ、またより善きことでもない。だが君に何かもっと辛いことが課せられる時、君は将軍から課せられた任務を果たすのを怠って不平を言い、そして君に関している限り、軍隊がどうなるかということを理解していない。
というのはもし皆が君のまねをするならば、人は塹壕を掘りもしないだろうし、また保塁をめぐらすことも、危険を冒すこともしないだろう。むしろ戦争の役に立たぬように思われるだろうからだ。(中略)
……各人の生活は戦役、しかも長く複雑な戦役のようなものである。君は軍人の本分を守らねばならない。
(『人生談義』鹿野治助訳 岩波文庫)
武家の家訓を分かりやすく述べたような、ローマ時代の哲学者の言葉だが妙に胸を打つ。「各人の生活は戦役」であり、「人生は軍務のようなもの」というのはその通りだと思う。
人生は軍務のようなものであるのを諸君は知らないか。或る者は歩哨をやらなければならないし、また或る者は戦うために出て行かなければならない。皆が同一の処にいることもできもしなければ、またより善きことでもない。だが君に何かもっと辛いことが課せられる時、君は将軍から課せられた任務を果たすのを怠って不平を言い、そして君に関している限り、軍隊がどうなるかということを理解していない。
というのはもし皆が君のまねをするならば、人は塹壕を掘りもしないだろうし、また保塁をめぐらすことも、危険を冒すこともしないだろう。むしろ戦争の役に立たぬように思われるだろうからだ。(中略)
……各人の生活は戦役、しかも長く複雑な戦役のようなものである。君は軍人の本分を守らねばならない。
(『人生談義』鹿野治助訳 岩波文庫)
武家の家訓を分かりやすく述べたような、ローマ時代の哲学者の言葉だが妙に胸を打つ。「各人の生活は戦役」であり、「人生は軍務のようなもの」というのはその通りだと思う。
2008年3月9日日曜日
自由ヶ丘「蜂の家」のこと その2
忠臣蔵のこと
以前書いたが、最近は週刊新潮に連載している『謎手本 忠臣蔵』(加藤廣)が面白くて愛読している。本屋に寄れなくて立ち読みできない週は、ついキオスクで買ってしまったりするのだ。
ところでこれまで忠臣蔵関係で読んだのは、以下の3冊位だ。
1.『忠臣蔵とは何か』(丸谷才一 講談社文芸文庫)
2.『忠臣蔵 赤穂事件・史実の肉声』(野口武彦 ちくま新書)
3.『裏表忠臣蔵』(小林信彦 文春文庫)
この中で最も気に入っているのは2番だ。史料をよく読みこんだ力作で深く印象に残る。
ところで「刀傷松の廊下」の出来事は元禄14年(1701年)3月14日に起こっている。まあ暦の違いはあるが、現代はホワイトデーだ。吉良邸討入りの12月14日と共に記憶に残る日だ。
忠臣蔵がなぜ人気があるのか。一般的な見解(権威権勢への反発、不遇者への同情、討入達成までの浪士達の苦労への共感と大望成就の爽快感など:野口武彦氏による)とは別に丸谷氏が提示した「御霊信仰」と「カーニヴァル」の論点は斬新で面白かった。
ところでこれまで忠臣蔵関係で読んだのは、以下の3冊位だ。
1.『忠臣蔵とは何か』(丸谷才一 講談社文芸文庫)
2.『忠臣蔵 赤穂事件・史実の肉声』(野口武彦 ちくま新書)
3.『裏表忠臣蔵』(小林信彦 文春文庫)
この中で最も気に入っているのは2番だ。史料をよく読みこんだ力作で深く印象に残る。
ところで「刀傷松の廊下」の出来事は元禄14年(1701年)3月14日に起こっている。まあ暦の違いはあるが、現代はホワイトデーだ。吉良邸討入りの12月14日と共に記憶に残る日だ。
忠臣蔵がなぜ人気があるのか。一般的な見解(権威権勢への反発、不遇者への同情、討入達成までの浪士達の苦労への共感と大望成就の爽快感など:野口武彦氏による)とは別に丸谷氏が提示した「御霊信仰」と「カーニヴァル」の論点は斬新で面白かった。
2008年3月2日日曜日
Z会と市進の提携
数日前の新聞に、Z会と市進の提携のことが載っていた。だいぶ前にも書いたのだが、最近は塾・予備校の再編が加速している。少子化の影響で市場が縮小しており、昔は1兆円産業といわれていたが、今は9500億円位になっている。
Z会といえば、昔大学受験の頃やっていたのを思い出す。ペンネームを使うのだが成績優秀者に名前が載ると嬉しかった。「らぐらんじぇ」というペンネームの有名人がいて、彼は灘から理Ⅲに入ったのだが、小学校の時塾で知っていたK君なのだ。今はどうしているだろうか…
息子は4月から中2なのだが、いずれZ会をやるようになるだろうか。今は参考書もかなり出版していて、英語の「速読英単語」シリーズなど有名なものもある。昔なじんだ者としては、相変わらず頑張っているのは喜ばしいことだ。
Z会といえば、昔大学受験の頃やっていたのを思い出す。ペンネームを使うのだが成績優秀者に名前が載ると嬉しかった。「らぐらんじぇ」というペンネームの有名人がいて、彼は灘から理Ⅲに入ったのだが、小学校の時塾で知っていたK君なのだ。今はどうしているだろうか…
息子は4月から中2なのだが、いずれZ会をやるようになるだろうか。今は参考書もかなり出版していて、英語の「速読英単語」シリーズなど有名なものもある。昔なじんだ者としては、相変わらず頑張っているのは喜ばしいことだ。
2008年3月1日土曜日
マティスのこと
2月25日の日経新聞朝刊の文化面に、アンリ・マティス作「王の悲しみ」のことが載っていた。
マティスは最も好きな画家の一人だ。「王の悲しみ」はマティス晩年の切り紙絵の大作で、抽象画なのだが王らしき人物がギターと思われる楽器を手にしている。一目でマティスとわかる色の使い方だ。パリ国立近代美術館にある。いつか見たいものだ…
マティスが愛好していたテーマに「部屋の中から窓を通して外景を望む」がある。以前、京都でみた「開いた窓、コリウール」(ニューヨーク・ホイットニー・コレクション)は、色彩が目も眩むばかりの美しさで、圧倒されたことを思い出す。
同じテーマの「ヴァイオリン・ケースのある室内」(ニューヨーク、近代美術館)も是非見たい作品だ。明るい光が、開け放たれたバルコニーのドアから差し込み、室内のヴァイオリン・ケースが空や海の青色を反射している。
まあ、今は作品集を眺めるだけで満足するとして、いつか見に行くことにしようか。
マティスは最も好きな画家の一人だ。「王の悲しみ」はマティス晩年の切り紙絵の大作で、抽象画なのだが王らしき人物がギターと思われる楽器を手にしている。一目でマティスとわかる色の使い方だ。パリ国立近代美術館にある。いつか見たいものだ…
マティスが愛好していたテーマに「部屋の中から窓を通して外景を望む」がある。以前、京都でみた「開いた窓、コリウール」(ニューヨーク・ホイットニー・コレクション)は、色彩が目も眩むばかりの美しさで、圧倒されたことを思い出す。
同じテーマの「ヴァイオリン・ケースのある室内」(ニューヨーク、近代美術館)も是非見たい作品だ。明るい光が、開け放たれたバルコニーのドアから差し込み、室内のヴァイオリン・ケースが空や海の青色を反射している。
まあ、今は作品集を眺めるだけで満足するとして、いつか見に行くことにしようか。
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