前回に続いて、最近読んだ本について書こう。
1.『グロテスク・ジャパン』(井上章一 洋泉社)
2.『日本人の階層意識』(数土直紀 講談社選書メチエ)
1は、全日空の機内誌『翼の王国』に連載されていたものを加筆している。日本の文化が海外で「グロテスク」に変形する様子(ドイツで「タタミ」というサンダルが売られたり、ブラジルに招き猫があったりする等)を書いていて、まあまあ楽しめた。
2は、日本人の階層意識と価値意識について分析している。価値意識では、「何を基準にして地位や財を分配すべきか」という質問に対して、日本人は業績より努力を挙げる割合いが高い。(SSM調査データ)
これについて著者は、その背景に努力することを強いるような日本的な組織・システムがあるとし、例として終身雇用及び新卒一括採用を挙げている。中途採用市場が未発達であり、正規雇用の身分を守るために「意に反して」長時間労働に従事していると感じている人が多く、「この努力は何らかの形で報われるべきだ」という形で、努力をより選択している可能性があるという分析だ。
個人的には業績を選択するのだが、この分析はなかなか鋭いと思った。もちろん日本人全般に一般化はできないが、日本的な組織・システムに適応する過程を通じて形成された価値意識がある、ということは否定できないだろう。