2012年9月1日土曜日

村上春樹 雑感その5

 8月25日の日経夕刊に村上春樹『羊をめぐる冒険』のことが載っていた。

 記事の中に、1981年に取材のために村上夫妻が畜産試験場を訪れたとある。「バンダナを巻いたヒッピー風の若い男女が訪ねてきた。」と。

 1981年(昭和56年)、32歳の村上春樹は千駄ヶ谷の「ピーター・キャット」を友人に譲り、小説一本でやっていくために千葉の習志野に転居している。移ってから最初の小説ということで、入念に準備をしたのだろう。記事には、畜産試験場以外にもいろいろな場所を取材したことが書いてある。

 しかし、「ヒッピー風」に見えたというのは少しイメージが違うが、若く見えたのだろうか。そういえば習志野に住んでいた時のことについて、「大学の正門のすぐ近くに住んでいたので、しばしば学生と間違われた。……そういう話を女房にしたら、「あら、そんなのまだいいわよ。若く見られてるんだから。私なんかこのあいだは大学の先生に間違われたんだから」ということであった。」と書いている。(『村上朝日堂 はいほー!』)

 こうして書き上げた『羊をめぐる冒険』は野間文芸新人賞を受賞した。5人の選者はほぼ全員が推していて、若い作者の才能を評価している。

(追記)
『羊をめぐる冒険』の冒頭にICU(国際基督教大学)が出てくる。なぜICUか、ということについてだが、村上春樹は神戸高校の同級生で、同じ新聞委員会に所属していたkさんという女性と仲が良かったのだが、kさんはICUに進学している。高校時代、二人は付き合っていたとの噂だったらしい。このkさんが『風の歌を聴け』の自殺したガールフレンドや『ノルウェイの森』の直子のモデルという話もあるらしいのだ。だからか、というのは良く分からないが、そういう可能性もあると思う。