2012年10月28日日曜日

10月の読書

今月読んだ本だ。

1.『レッドアローとスターハウス』(原武史 新潮社)

2.『団地の空間政治学』(原武史 NHKブックス)

3.『エムズワース卿の受難録』(P・G・ウッドハウス 文春文庫)

1は雑誌「考える人」に連載中から、面白いと思っていた。「レッドアロー」は西武的なもの、「スターハウス」は団地の時代の象徴として描かれているのだが、鉄道沿線の団地をめぐる思想史の力作。2は1の関連として読んでみた。

3は短編集で、久しぶりに読んだのだが、いつもながらストレス解消としてとても楽しめる。

 もう10月も終わりでやっと秋らしくなってきたのだが、今年は息子が大学受験ということで、この週末にインフルエンザの予防接種を受けてきた。中学受験以来6年ぶりだ。この1回で、来年また受けることが無いようにしてもらいたいものだが、さてどうなるでしょうか。

2012年9月1日土曜日

村上春樹 雑感その5

 8月25日の日経夕刊に村上春樹『羊をめぐる冒険』のことが載っていた。

 記事の中に、1981年に取材のために村上夫妻が畜産試験場を訪れたとある。「バンダナを巻いたヒッピー風の若い男女が訪ねてきた。」と。

 1981年(昭和56年)、32歳の村上春樹は千駄ヶ谷の「ピーター・キャット」を友人に譲り、小説一本でやっていくために千葉の習志野に転居している。移ってから最初の小説ということで、入念に準備をしたのだろう。記事には、畜産試験場以外にもいろいろな場所を取材したことが書いてある。

 しかし、「ヒッピー風」に見えたというのは少しイメージが違うが、若く見えたのだろうか。そういえば習志野に住んでいた時のことについて、「大学の正門のすぐ近くに住んでいたので、しばしば学生と間違われた。……そういう話を女房にしたら、「あら、そんなのまだいいわよ。若く見られてるんだから。私なんかこのあいだは大学の先生に間違われたんだから」ということであった。」と書いている。(『村上朝日堂 はいほー!』)

 こうして書き上げた『羊をめぐる冒険』は野間文芸新人賞を受賞した。5人の選者はほぼ全員が推していて、若い作者の才能を評価している。

(追記)
『羊をめぐる冒険』の冒頭にICU(国際基督教大学)が出てくる。なぜICUか、ということについてだが、村上春樹は神戸高校の同級生で、同じ新聞委員会に所属していたkさんという女性と仲が良かったのだが、kさんはICUに進学している。高校時代、二人は付き合っていたとの噂だったらしい。このkさんが『風の歌を聴け』の自殺したガールフレンドや『ノルウェイの森』の直子のモデルという話もあるらしいのだ。だからか、というのは良く分からないが、そういう可能性もあると思う。

2012年8月18日土曜日

8月の読書

今月読んだ本だ。

1.『郊外はこれからどうなる?』(三浦展 中公新書ラクレ)

2.『芭蕉』(田中善信 中公新書)

3.『本当の経済の話をしよう』(若田部昌澄/栗原裕一郎 ちくま新書)

 1は第四山の手論など著者の郊外論、というか入門書。巻末のブックガイドは目配りがきいている。

 2は、あまり期待しないで買ったのだが、とてもよくまとまった伝記で読みごたえがあった。こうしたところはさすが中公新書、という感じがする。

 3は経済学入門書だが、「インセンティブ」「トレード・オフ」「トレード」「マネー」の四つの概念に絞って対話式に学ぶ、というコンセプトがある程度うまくいっていて、なかなか楽しめる本になっている。続編に期待したいところだ。

 お盆も過ぎて、そろそろ夏も終わりなのだが、まだまだ暑い。(まあこれは例年のことか。)クール・ビズが定着していなかったら、もっと大変だったと思うと、この2005年に始まったキャンペーンは評価できるだろう。

2012年7月22日日曜日

7月の読書

今月読んだ本のことを書こう。

1.『円高の正体』(安達誠司 光文社新書)

2.『女子・結婚・男選び』(高田里惠子 ちくま新書)

3.『シドニー!』(村上春樹 文春文庫2冊)

1はデータの用い方が適格で説得力がある。説明が非常にわかりやすく名著だといえるだろう。

2は、期待していたほどではなかったが、まあ楽しめた。水村美苗と岩井克人、柄谷行人と冥王まさ子(この人は良く知らない)など、懐かしい名前が-ニュー・アカデミズムを思い出す-出てくるのだ。

3は、ロンドンオリンピックが近いのでずいぶん久しぶりだが再読してみた。オリンピックを「密度の高い退屈さの究極の祭典」と著者はいう。とことん退屈ではあるが、それを補うくらいに価値のあるものだったと。そうした、退屈さを通して感銘を与えてくれる祭典の、リアルタイムでの日誌は今読んでも新鮮だ。

2012年6月10日日曜日

6月の読書

最近読んだ本だ。

1.『秀吉と海賊大名-海から見た戦国終焉』(藤田達生 中公新書)

2.『漱石のリアル――測量としての文学』(若林幹夫 紀伊國屋書店)

3.『クラシック音楽の政治学』(渡辺裕、若林幹夫他 青弓社)

 1は井上章一の日経書評にあったもので、海賊史を通した大名間のかけひきを論じた個所は読みごたえがあった。中世から近世にかけての移行の読み解き方が新鮮だ。

 2と3は若林氏の著作で未読だったものだ。2は漱石を社会学から論じたもので、とても面白い。高校(筑駒)時代に、元となる着想が湧いていたというのには驚いた。

 3は若林氏の「距離と反復-クラシック音楽の生態学」が読みたかったからだが、期待通りに面白かった。

 梅雨に入って最初の週末だ。去年は梅雨入りが早くて、明けたのも7月初だったが、今年はどうなるでしょうか。

2012年6月3日日曜日

『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』

少し前なのだが、ジョン・ル・カレの『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』の新訳を読んだ。

 キム・フィルビー事件に想を得たスパイ小説としては、グレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』と双璧だろう。

 細部の描写を積み重ねて、じっくり話が進んでいくこの作者の手法が、二重スパイの話によくあっている。何度読んでも堪能できる小説はなかなか無いが、この作品は数少ない中の一つだ。

 この小説を映画化した「裏切りのサーカス」は見ていない。スマイリー役の俳優が今一つイメージと違う気がしたからなのだが、いずれ機会があればDVDで鑑賞してみようか。

2012年5月27日日曜日

ブログを再開

一度閉じたブログだが、再開することにした。

SNSで書こうと思ったのだが、なかなか良いのがなかったのだ。
題名は、ごく平凡だが、変えてみた。

この先、Google+につなげるかもしれない。その時は、前に書いた「terakoya7」にしてみようか。