2011年9月25日日曜日

法界寺のことなど

 最近、『私の古都巡礼 京都(下)』(淡交社)を読んだのだが、その中で、井上章一が法界寺について書いている。法界寺は、京都の観光スポットではマイナーな存在で、知らない人も多いだろうと思う。
 私も、高校の時だったか、建築・仏像の文化財で有名ということを聞いていて、存在は知っていたが行ったことはない。平安から鎌倉時代初期に建てられたものらしい。


 京都の寺院で観光客の多いところは、大抵美しい庭園を売り物にしている。そして、井上章一の仮説によると、こうした庭は、多くが室町時代以降に作られ、戦国時代末期から洗練された。それは、戦いをつとめとする武人達をなぐさめるという、そうした求めに応じて営まれたのだという。


 仏教が庭園美を生んだのではなく、戦士たちの殺伐とした心がそうした庭を欲した。そうしてできた庭園の管理者に、後から僧侶たちがなった。それと同じものが今、私たちの目を癒している。つまり、味わうものが、仏像や仏画から庭園にうつっていったのだと。


 この仮説の正誤は不明だが、なかなか説得力があると思った。そして、法界寺はそうした寺院鑑賞史の中で、より古い時代の遺構であり、そのためあまり知られていないのだろう。


 しかし、このエッセイを読んでいると、帰省の折にでも是非行ってみたいと感じるだ。このあたりのうまさは、さすがだと思う。 

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