前回満開の桜のことを書いたので、今度は桜の詩歌のことを書こう。
またや見ん交野のみ野の桜狩り 花の雪散る春のあけぼの
藤原俊成の作で『新古今和歌集』に載っている。最も好きな桜を詠んだ歌だ。
交野は現在の大阪府交野市で、皇室専用の狩猟場があり、また桜の名所として知られていた。桜狩りとは花見のことで、み野の「み」は美称だ。
この時俊成は82歳で、老齢の身ゆえこの眺めを二度と目にすることは難しいだろうと自分に言い聞かせている。「交野」を「難し」にかけているという説明もある。(丸谷才一『日本文学史早わかり』所収の「花」。)
夜が明け始める時の幻めいた曙が、「花の雪散る」景色を非常に美しいものにしている。
木のもとに汁も膾(なます)も桜かな
松尾芭蕉の晩年の作。これも好きな俳句だ。桜の樹の下で、汁にも膾にも花びらが浮かぶという、花見の時の少し浮かれた雰囲気がよく出ていると思う。
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